村上正博 — 特殊効果
エピソード 26
十六歳、春、まだつぼみ
突然、母、皐月(さつき)から「夜逃げをすることになった」と伝えられた松前緒花(まつまえ・おはな)。 母親から手渡されたのは“喜翆荘”(きっすいそう)という名と、電話番号が書かれた一枚の紙切れだけ。 住み慣れた街、母親、そしてクラスメイトの種村孝一(たねむら・こういち)に別れを告げ、 まだ出会ったことのない祖母がいる街で暮らすことになった緒花は、 海岸線を走る列車からの景色を見ながら、これから始まる新たな生活に思いをはせるのだった。
もっと読む復讐するは、まかないにあり
「従業員として働きながら高校に通うこと」と、祖母である四十万スイ(しじま・すい)から厳しく言われ、 スイが経営する温泉旅館“喜翆荘”で、新たな生活を歩み始めた緒花。 それは思い描いていた生活とはほど遠い世界だった。 だが彼女は、板前見習いとして住み込みで働く鶴来民子(つるぎ・みんこ)や 同じ仲居の押水菜子(おしみず・なこ)をはじめ、喜翆荘で働く従業員たちと打ち解けようと孤軍奮闘。 しかしその頑張りが裏目に出てしまう。
もっと読むNothing Venture Nothing Win
ある朝緒花が玄関を掃除していると、車に乗ったひとりの女性が現われる。 彼女こそ、経営が苦しい“喜翆荘”を立て直すべく、叔父であり番頭である 四十万縁(しじま・えにし)が雇った経営コンサルタント川尻崇子(かわじり・たかこ)だった。 実は、ほぼ毎月やってくるという崇子から今回提案されたのは、仲居の服装を一新する案だった。 ド派手な衣装を前にとまどう従業員たちだが、崇子の迫力と縁の勧めで、 とりあえず服装を変え仕事をすることに。
もっと読む四十万の女 ~傷心MIX~
母親を車に乗せ戻ってきた緒花たち。 皐月は着くなり、浴衣のデザインやお茶菓子、お風呂の時間について、いろいろと指摘する。 菜子はそんな彼女を素敵と思い、小さい頃から姉にいじめられてきた縁は威圧的なオーラにひるみ、 次郎丸は皐月の艶めかしく白いうなじにやられていた。 一方、スイと緒花は皐月と距離を取っていたのだが……。 仕事を通してスイ、皐月、緒花それぞれの気持ちが交錯。 四十万の女たちの物語に新たな1ページが加わる。
もっと読むプール・オン・ザ・ヒル
喜翆荘の螺旋階段では、緒花と菜子に追い詰められ進退窮まった結名の姿があった。 喜翆荘を舞台にして、さらに現地の人も積極的にキャスティングすることとなった映画製作。 特撮用の機材も運び込まれ、カメラテストが行なわれていた。 それを嬉しそうに眺める縁。 喜翆荘の庭にある池が映画の為に掃除され、元のプールの姿を取り戻すと、 縁はそこに過去の幻影を見る。 一方、東京に戻った皐月からスイへ一本の電話が……。
もっと読むラスボスは四十万スイ
偶然にも東京で出会った緒花と孝一。 突然のことに驚くふたりだったが、 孝一はあらためて自分の気持ちを緒花に伝えようと、ゆっくりと話しだす。 しかし孝一の気持ちを汲み取った緒花は、それを遮り、 ぼんぼり祭に来て欲しいとお願いする……。 喜翆荘に戻ってきた緒花と崇子を待ち受けていたのは、 ひっきりなしに入る予約の電話だった。 盛り上がる縁や巴だったが、スイは決心を変えるつもりはなく、 これ以上の予約を取らないようにと言う。
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